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種類: Thesis or Dissertation
タイトル: 予後不良な思春期がん患者をケアする過程で生じた看護師の無力感 - リエゾン精神看護実践を行った一事例を通して-
タイトル別表記: The powerlessness of nurses in the process of caring for adolescents with advanced cancer: a case study of psychiatric liaison nursing practice.
著者: 林田, 由美子
指導教員: 萱間, 真美
キーワード: がん患者
予後不良
無力感
リエゾン精神看護
発行年月日: Mar-2008
抄録: 思春期は心身の成長が著しく、親への依存から自立へと移行する時期であり、自我同一性の獲得という課題に取り組み、情緒的に不安定になりやすい時期といえる。このような時期に病気に罹患することは、本来獲得されるべき自己の同一性や連続性の感覚が脅かされ、自我同一性の拡散という発達的危機と、疾患による状況的な危機状態に陥る可能性がある。ましてその病気が予後不良である場合、患者へのストレスは計り知れないものである。したがって、このような患者をケアする看護師の心理的ストレスも大きいことが予測される。 本研究は、リエゾン精神専門看護師の実習生として、予後不良な思春期のがん患者に対する直接ケアと、患者に関わるスタッフの調整と相談などの間接的ケアの過程を振り返り、患者と、実習生を含む看護師双方に生じた現象を詳細に検討することを目的とした事例研究である。 対象者は、がん専門病院の成人対象の病棟に入院していた10代半ばの盲腸がん再発の男性患者A氏である。A氏に関わる看護師は十分なケア経験がない思春期患者への対応に不安を感じており、病棟師長からの依頼で実習生である研究者が担当することになった。 研究者はリエゾン精神専門看護師の実習生として、初回入院から外来期間を経て、再入院から転院までの間、A氏に1回につき30~60分の面接と、看護師への教育的支援や情緒的支援を行った。 その結果、A氏はがんへの罹患により、病気に対する無力感や死への不安、仲間からの疎外感、自立と依存の葛藤を抱え、自我同一性の拡散という危機的な状況にあったと考えられた。これらは自我を脅かすほど不安なものであり、A氏は否認や回避の防衛機制を使って不安に適応しようとし、逸脱行動や拒否的な態度として表現していたと思われた。 実習生を含む看護師は、A氏のケアに対して不安を感じていたが、自分らしく生きられることを支援するというケアの方向性を統一し、A氏の意思を尊重して関わった。しかし、実習生と看護師はA氏に同一化しており、【発達途上の青年が病気であることに対する悲嘆】や【病状悪化に対する悲嘆】、【予後不良な病気に対する無力感】を抱いていた。一方、A氏が自分らしく生きられるよう支援しているという思いももっていたが、病状が悪化したことにより、【患者に適切な療養行動を導けなかったことに対する無力感】、【治療を継続できなかったことに対する罪悪感】を抱き、【ケアに対する自信の揺らぎ】を生じ、【ケアに対する不全感】を抱くことになった。これらの感情が関連し合い、看護師の無力感を構成していたと考えられた。  研究者は、リエゾン精神専門看護師の実習生として看護師と協働し、常に共に考える姿勢でいることを示していた。思春期の発達的特性や意思決定への支援に関する専門的知識を補ったり、A氏との面接で得られた情報と、看護師が日常のケアで得た情報を統合し、発達心理学的、精神力動的に解釈したことを伝えていた。また、看護師が行っているケアにどのような意味があるか伝えたり、看護師と実習生の間で互いに感情を表出し合っていた。このような関わりにより、看護師は不安を抱えつつもケアの方向性を見失わず、必要なケアを継続することができていた。 そして、A氏は治療中断と病状悪化というプロセスを経て、自己の存在価値を認識し、自我同一性の確立に向けて成長が認められた。これは、A氏と共に揺れながらも、意思を尊重し、受容的姿勢で関わり続けた看護師のケアが発達促進的であり、A氏にとって治療的な環境を提供していたためであると考えられた。 看護師の無力感への対応としては、他者に思いを表出し、カタルシスを得ることにより、自己の限界を受け入れることが重要であり、その上でできることを見出していくことが必要であった。また同時に、ケアを冷静に振り返り、できていることを認めることや患者に生じている現象を理解し、患者の成長や変化を実感することも重要であり、これらが無力感を克服するための手がかりになると考えられた。  本研究から、看護師が無力感を抱いたとき、リエゾン精神専門看護師は患者ケアへの支援と看護師の感情への支援を行うことが必要であり、これらの支援を通して、看護師は無力感を克服する手かがりをつかみ、患者へのケアを継続していけることが示唆された。
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注記: 聖路加看護大学大学院看護学研究科課題研究
事例研究
リンクURL: http://hdl.handle.net/10285/1356
出現コレクション:2-2-d:課題研究(要旨、引用・参考文献・本文あり)
2-2-a:課題研究(要旨、引用・参考文献なし)

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この研究成果の引用には次のURIを利用してください。: http://hdl.handle.net/10285/1356

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